今回のカバー写真には「富豪雪糕」のワゴン車の写真を使ってみた。大学時代に初めて香港へ行ったとき、尖沙咀で富豪雪糕に出くわした。
一緒に回った友達(私より香港に詳しい)に「このソフトクリームは出会ったら絶対に食べな~」と言われて食べた。一般的なミルクソフトだったと思うが、普通に美味しかったのと、9月の暑い時期だったので冷たいというだけで大変にありがたかった記憶がある。
「記憶がある」などという書きぶりなのは、私がワゴン車の写真だけ撮っていて、肝心のソフトクリームを撮り忘れたからだ。たしかに車のデザインは可愛いけど。自分がポンコツすぎる。

そんな富豪雪糕の創業者の方の1人が亡くなったというニュースを、つい1週間ほど前に見かけた。創業者の1人である何敬源さん、1月に98歳で亡くなったという。
このワゴンがいつから存在するのか知らなかったので(記事では1969年に起業と書いてある)正直なところ、直近までご健在だったことに驚いた。
香港の情景の1つとして、私の脳裏に刻まれている富豪雪糕のワゴン車(とソフトクリーム)。これからも変わらずあり続けてほしいと思った。今度また香港で出会ったらソフトクリーム食べて、できれば食べる前に写真も撮ろう。
広東語を勉強しよう!
牛歩のごとく進んでいるわたくしの広東語学習。初回の発音訓練を経て、ようやくあいさつや簡単な動詞文などのパートに入った。

文法項目などもあると言えばあるが、やはり私は発音が難しい。全体的な文法の作りは普通話に通ずる部分があると思うので、「文法用語や漢字の読み方、単語を広東語に置き換えて話す」みたいな気分だ。
(私は普通話をベースに考えてしまうところがあるが、中国語の入口として広東語を勉強しよう! という方もいると思う。その場合どうなるかというのもちょっと考えて、今後記事を書きたいと思っている。)
「ご飯食べた?」文化圏
広東語のあいさつというと「你好(ネイホウ)」=こんにちは、「早晨(ゾウサン)」=おはよう みたいな所謂のあいさつもあるが、香港人の先生が「教科書には載ってないけど……」と言って教えてくれたものが2つある。
1つが、「食咗飯未呀(セッジョーファーンメイア)?」=ご飯食べた? というもの。普通話にそのまま置き換えるならば、「吃了飯沒?」といったところだ。
普通話でも「吃飯了嗎?」=ご飯食べた? というのが定番のあいさつフレーズとしてある。何なら韓国語でも「밥 먹었어?(パプ モゴッソ?)」=ご飯食べた? と切り出すことが多い。
…みんな何で「ご飯食べた?」って聞くの??
個人的な問いですみませんけど、常々思っていたのでこの際に。安否を気にしてくれているのはよく分かるのだが、最初は何て返せばいいのか本気でわからない時があった。
そんなん「食べた/まだ食べてない(これから食べる)」みたいにサラッと答えて、さっさと本題に入ればいいだけのものなのだ。
ただ、私はいつでも自分がセカチューのコミュ障人間なので「私がもし食べてないって答えて相手を心配させたらどうしよう…」などといらぬ心配をして「(本当は食べてないけど、とりあえずまあ)た、食べたよ!」みたいに返すこともなくはなかった。
「食咗飯未呀?」や「吃飯了嗎?」、「밥 먹었어?」に関しても、基本的に相手を気遣う暖かい言葉だと思う。
でも最近思うのは、相手がご飯を食べたのかどうか、実際のところは多分そこまで気にしてない(※個人の感想)。まさに気持ちだけ受け取って、本題に入るのが良いと思うのだ。
「飲茶行く時間ある?」
「食咗飯未呀?」が会話の始まりなら、もちろんクロージングのあいさつもある。先生が教えてくれたクロージングのあいさつが、「得閒飲茶(ダッハーンヤムチャ)?」だ。

「得閒飲茶?」、漢字のフィーリングで意味を類推できるかもしれない。直訳すると「飲茶行く時間ある?」といった意味になる。
この「得閒飲茶?」、個人的にはとても興味深いあいさつだと思った。
1つは、「香港人、飲茶めっちゃ大好きじゃん!」ということ。いや、本当に素晴らしいと思う。飲茶美味しいし。
確かにわれわれ日本人も「お茶でもどうですか?」と言うし、韓国なら「コーヒー飲みに行く?」くらいになると思うのだが、香港ではそのポジションが飲茶なのは非常に興味深い。
でも、「得閒飲茶?」の奥深さはここからだ。「食咗飯未呀?」然り、「得閒飲茶?」も飲茶に行く時間があるかを聞いているわけではない。クロージングのあいさつと紹介した通り、ひとしきり話し終わって「バイバイ」のテンションで「得閒飲茶?」と言って別れるらしい。
「飲茶行く時間ある?」と聞いて別れる、このノリは何だか身に覚えのある気が…
「今度飲みに行こうね!」って言って一生行かないやつでは??
まあ、「得閒飲茶?」に関してはもう定型表現化しているので、そう深く考えないで言っていると思うのだけど。
調べていたら「得閒飲茶(I’ll Call You)」という香港映画があるようで、Wikipediaのページが存在した。そこに「タイトルの意味」という項目があったので、引用して紹介したい。
「得閒飲茶」是廣東和香港的俚語,卻擁有兩個相反的詞義,一是照字面解釋「找個時間坐下來談談吧」,另一個則是「我們最好不要再見面了」。
出所:Wikipedia「得閒飲茶」https://zh.wikipedia.org/zh-tw/%E5%BE%97%E9%96%92%E9%A3%B2%E8%8C%B6
だいたいの意味は、“「得閒飲茶」は広東と香港の口語表現で、2つの相反する意味をもつ。1つは文字通り「時間を見つけて少し話しましょう」、もう1つは「私たちはもう会わない方がいいでしょう」”。
いや、「もう会わない」って言ってる!
難しいだけじゃない、広東語の発音
ちょっとしたところで日本語と広東語の共通点を見つけたところで(?)私が前回からワーワー騒いでいる広東語の発音も、意外に日本語と近い部分があるかもしれないと思ったりしている。
時間 | 世界 | 歴史 | |
日本語 | Jikan(じかん) | Sekai(せかい) | Rekishi(れきし) |
広東語 | Si4 gaan3(シガーン) | Sai3 gaai3(サイガーイ) | Lik6 si2(レックシー) |
普通話 | Shíjiān(スージエン) | Shìjiè(スージエ) | Lìshǐ(リースー) |
韓国語 | 시간:sigan(シガン) | 세계:segye(セゲ) | 역사:yeogsa(ヨクサ) |
上の表は、私が勉強しながら日本語と発音が似ているなと思った単語だ。最近はトワイライト・ウォリアーズのインタビューなどを見ながら(※本当にずっと見てる)、広東語がわからないなりに「聞き取れる…!」と思ったものを挙げた。
上の2段が日本語と広東語の比較だが、何となく発音が似てそうだと思っていただけるだろうか。3段目の普通話より発音自体は似ている気がするし、何なら韓国語とも近いものを感じる。
林峯(レイモンド・ラム)の相槌を聞く
ただ、もうご存じの方も多いと思うが、広東語コンテンツを見ていて一番聞き取れるのは間違いなくこれだ。
はい。
…はい? って感じかもしれないが、香港人は「はい。」と言う。しかも、用法も日本語と似ている部分がある。
少しだけ解説すると、広東語には「係(hai6)」という単語があり、英語だったらbe動詞、普通話なら「是(shì)」に近い意味をもつ。例えば「私は日本人です」なら、広東語では「我係日本人」となる。
で、この「係」のいいところは(いいところ?)、会話をするときの相槌としても使えるところだ。
日本語でも話を聞きながら「はい、はい~」と相槌を打つと思うが、どうやら同じニュアンスで広東語でも「係(ハイ)~」と言うことができるようなのだ。
参考資料を持ってきたので良かったら見てほしい(大真面目)。トワイライト・ウォリアーズで主役の陳洛軍を演じた林峯(レイモンド・ラム)、みんな大好き(←断定)信一役の劉俊謙(テレンス・ラウ)のインタビューだ。
見てもらえば分かると思うが、林峯がめちゃめちゃ「係(ハイ)」って言う。
もちろん劉俊謙も他の人も言うし、相槌以外でもたくさん出てくるが、林峯の「係(ハイ)」は「相槌打ってんな~!」という(どんな感想?)「係(ハイ)」なので、こうやって話聞けばいいのか~と参考になる。
(※ご丁寧に林峯の「係(ハイ)」が聞き取りやすいところで時間指定しているので、賞味2分くらい見てもらえると大変ありがたい)
最後に、私は飲み会にあまり興味がない人間なので、「今度飲みに行こう」の「今度」がいつ来るか、果たして本当に来るのかは保証できないのが正直なところだ(おい)。
ただ、茶をしばくのと飲茶をしばく(食べる)のは大好きなので、私が「飲茶行こう!」と言ったときは誘いに乗ってくれると…非常にうれしいです。はい。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは!今回も面白く読ませていただきました。香港、韓国、日本と、アジアといえど異なる文化の国に共通するところがあるというのは親しみを感じますし興味深いですよね。広東語の「はい」という返事、映画の中でも信一が言ってましたよね〜あれちょっと嬉しく思ってました(笑) 次のお話も楽しみにしてます!
いつも素敵なコメントを書いてくださり、ありがとうございます!文字や文法構造が違っても、単語レベルなどで共通する文化があるのは本当に興味深いと思います。
映画の中でも「はい」って言ってますよね!「ハイラ~」とか「ハイア~」のように語尾に気分が現れるところも好きです~
今後ともどうぞよろしくお願いします~!